【楽しみ】

聞くだけで安らぐ言葉を知っていて、それを実際に聞くことで心が安らぐ人は素晴らしい。 かれは静けさの境地が虚妄ならざるものであることをこころに覚知しつつある。 それそのものは一種呪文のようなものに過ぎないが、それを超えて真実を見極めたとき、真の静けさが訪れる。

ニルヴァーナの楽しみは世の最上のものである。 しかし、世の楽しみを知らない人がどうして最上の楽しみを覚知できよう。 楽しみを知って溺れず、快楽に堕することなく、心が静まることによる楽しみを知った人はついにこの無上の楽しみを体得する。

仏の言葉は気休めではない。 仏たちは二心なき真実の言葉を語る。 それを聞く人の心が安まったならば、それは聞く耳を持つ人の手柄である。

仏道は、苦行が楽に転じる道ではない。 仏道は、その歩み自体が楽しみであり、栄えとともに楽(=ニルヴァーナ)が訪れるまるで夢のような道である。 こころから信じ、人と世の真実を明からめたとき、人は自らの因縁によって解脱を果たす。 それが覚りの真実なのである。