【暗愚】

ことわりを解せず愚鈍であること、あるいは拙速ゆえに自ら過失を犯す者。 かれらは、それだけで決して暗愚なのではない。 なんとなれば、かれらがのちに学識によって愚鈍さを超え、聡明さによって行為の過失を知り明らめるに至ったならば、かれらはそれぞれに暗愚を離れ得るからである。

安穏の近くにあって安穏を知らず、安穏ならざるもの(=苦悩)に安住しながらしかも嬉々として世間を生きて、笑いながら(自らを滅ぼす)悪を為す者。 かれこそ<暗愚>である。 かれは、豊富な知識によっても、研ぎ澄まされた見識によっても、暗愚を離れることができない。 かれは、他の何にもまして学識に欠けるところがあるからである。

真実のことわりをこころに知る明知の人は、決して遠いところにあるのではない安穏のよすがを、誰に頼ることなく自ら見いだして、知識によらず、見識によらず、その他いかなる何ものにもよらずして自ら暗愚を離れるに至る。 かれは、ついに一切世間を出て円かなやすらぎへと入り、二度と戻っては来ない。

聡明な、こころある人は、学識ゆたかな人々とつきあい、以て自らの学識を増大せしめて暗愚を離れ、自らによって自らの明知を輝かせよ。 明知によってもたらされる智慧こそが、人の心の闇を破る唯一無二の光明なのである。