【たった一人のために】

人をして円かな安らぎへといざなう真実の言葉は、たった一人のためにこそ発せられる。 それは、どこにでもあるような平易で簡潔な言葉であるが、それが実際に世に出現するのは稀有のことである。 それは、ただ待っているだけでも聞くことができず、進んで聞こうと願ったとしてもそのことによって世に出現するとは(断定的には)言えないものである。

しかしながら、その稀有なる言葉は、それが世に出現したときには、それを聞こうと熱望する人に呼応するかのように現れて、人々を浄めるのである。

それゆえに、円かな安らぎを求める人は、慎しんでものごとを語り、目を澄ませ、耳聡く、想いを落ちつけ、よく気をつけて世間を遍歴せよ。 法の句(=ダルマ)は、まさにそのような人のために世に現れ出るのであるからである。