【自利と利他】

自分の利益(りやく)のみを願う者は、自らの根本を掘り崩す愚者であり、それゆえにかれは滅びの道を突き進んでいるのであると知られる。 かれにとって、安穏は遠い彼方にある。

その一方で、他の人の利益(りやく)を願い、それが自分の利益(りやく)そのものなのであると(こころに)知る人は、自らの根本を堅固ならしめ、相手の安全をも全うする賢者であり、それゆえにかれは栄えの道を歩んでいると知られる。 かれにとって、不滅の安穏(=ニルヴァーナ)はすでにかれの近くにある。

自利と利他は、次のものであると(知る人には)知られる。

○ 利他はつねに実行できるものである。 それゆえに、つねなる自利が全うされるのであると知られる。
○ 完成された自利は、濁り無き利他に他ならない。 それゆえに、それは自らの道を浄めしむ。
○ 利他は無念によって喚起される。 それゆえに、後悔のない結果を生む。
○ 利他は無相なるものである。 それゆえに、互いの安全が全うされる。
○ 利他は無住なる心の発露である。 それゆえに、人の心を解脱せしめる。
○ 完成された自利は無住なる心によって喚起される。 それゆえに、一切の障害を破り、諸悪を砕く。
○ 完成された自利は無相の衣装を纏う。 それゆえに、誰にも知られることなく完遂される。
○ 完成された自利は無念の発露に他ならない。 それゆえに、すべての人々を満足させる。

こころある人は、利他を為すべきであり、それによって自利を得て、しかもそれが利他を全うすることに他ならないのであると知れよ。