【それ】

ここなる人が、ことに臨んで、「それ」を次のように見聞きするならば、かれは<発心>する。

○ ありのままに見るのではなく、誤って見るのではなく、見ないのではなく、見て見ぬ振りをするのでもない。

○ ありのままに聞くのではなく、誤って聞くのではなく、聞かないのではなく、聞いて聞かぬ振りをするのでもない。

さらに、人が<大事>に臨んで「それ」の真実を見極め、次のように想いを理解するに至ったならば、かれは一切から解脱して識別作用を終滅せしめる。

● ありのままに想う者でもなく、誤って想う者でもなく、想いなき者でもなく、想いを消滅した者でもない。

それゆえに、こころある人はよく気をつけて世を遍歴し、ことに臨んでは「それ」をまさしくこのように理解せよ。 「それ」をそのように理解するに至るというそのことが、「それ」がそれであることの証に他ならないからである。