【因縁】

人が解脱して覚りの境地に至ることに限らず、この世の出来事はすべからく因縁にもとづいて起こるのである。 そして、因縁は人為を以てどうこうできるものではないものなのであると言わねばならない。 すなわち、因縁は人が為す行為の帰趨とは言えず、それゆえに経験や努力などによって因縁を醸成したり薫習したりすることは出来ないのである。

かと言って、因縁は世間で言うところの運命や宿命と並び称されるものにはあたらず、一部さえもそれらに属さず、つまるところそれらとは関係がない。

それゆえに、人が何を為そうとも、あるいは為さずとも、何か特定のことによって覚りの境地に至る因縁(=<一大事因縁>)を生じるとは断定的には言えないことである。 しかしながら、ここなる人が聡明であって、人と世の真実を知ろうと熱望するならば、かれ(彼女)は覚りの境地に至る因縁を間違いなく生じるであろうと言うことができ、それは決して気休めではない。

こころある人は、世のさまざまな因縁を超えて覚りの因縁を生じ、自らの因縁によって円かなやすらぎ(=ニルヴァーナ)へと到達せよ。