覚りの根本の真理

過去のことを後悔したところで、結果が変わることは無い。未来のことをあれこれと画策して、思惑を生じても、その通りにはならな い。ゆえに、〈道の人〉は、現在に注視して、行為する。過去が正しいならば、現在も間違えない。現在を間違えないならば、未来に不吉なことがない。

衆生は、実は過去に間違えているので、現在においてめざめて(つまり覚って)いないのである。ゆえに、過去のことがらを省察して「そのとき自分は何者であったか」について考究し、その真実の真相を知るならば、現在において解脱が起こる。

真実は、後づけでしか理解され得ない。ゆえに、過去のことがらから真実を明らかにすることしかできない。そして、実際にそれを為し遂げた時、解脱が起こると説かれる。それが覚りの根本の真理である。

上手にやろうとして現在のことを取り繕っても、苦の体を取り除かないならば、苦は繰り返し襲い掛かってくる。その苦の体が、この名称と形態(nama- rupa)であると知られる。覚った(=解脱した)人は、まさにこれらが脱落し、同時に一切の苦悩が終滅したことを知っているからである。

細かいトゲは、抜き去ることが難しい。この名称と形態(nama-rupa)を取り除くことは、さらに難しく、法(ダルマ)に随って取り除くしか方法が無 い。そこで、その道たる正法が説かれる。人は、唯一、この道によってのみこれらの苦の体を取り除くことができ得る。他の方法によっては、不可能である。