膨大な経典?

いわゆる学問や修行によって知識や経験が蓄積され、見識が深まり、そうして覚るのではない。覚りは因縁にもとづいて起こることであり、知識や経験 や見識とは関係がないからである。学識豊かな、いとも聡明な人が、功徳を積んだとき、覚りの機縁・因縁を生じて、ついに覚る。これが覚りの実際である。

ところで、膨大な仏典──などと言う。しかしながら、仏教の根幹は正法であり、経典によって言い方は違うが、それぞれ文字数にして十数文字〜数十文字で表 すことができるものに過ぎない。そして、その短い言葉の意味を理解し得たならば、覚ると説かれる。これは本当のことであり、すべて人はこのようにして覚る ことになる。

功徳を積んだ人だけが、正法の意味を理解することを得る。それが法(ダルマ)だからである。正法そのものは魔法の呪文ではないが、正法がいわんとすることの意味を心底に理解したとき、一大事因縁を生じて、解脱が起こるのである。