【偶然ではない】

この世には、何一つ偶然はない。人々(衆生)にとっても、修行者にとっても、覚者にとってもそうである。

そのときに誰かと出会ったのは、まさにそのときでなければならないからなのである。それを覚りの機縁とする人もあれば、それを無為にやり過ごしてしまう者もある。

気をつけている人が、その機縁を正しく機縁と為す。 ことに臨んだそのときが、この世においていつでも生じ得るの理由は、気をつけている人があるからである。 つまり、まるで偶然に見えて、実は偶然ではないのである。

こころある人は、それ以前のことも、それ以後のことも考えず、ただ目の前のことだけを考える。そこに偉大なる智慧が出現する。その刹那に、一切の心の動揺を静めて、定を為す人があるからである。


[補足説明]

「一円の公案」は、この機微を示唆するものである。