【知足論】

ある人が掲示板に書いているように、釈尊の仏典には次の記述が見られる。

 『およそ、この談論は煩悩を損減し、心の蓋いを離れるのに適し、ひたすら厭離にも離貪にも滅にもこころの寂静にもすぐれた智慧にも正しいさとりにもニルヴァーナにも役立つ。すなわち、少欲論、知足論、遠離論、不交際論、精進努力論、戒論、禅定論、智慧論、解脱論、解脱知見論など、かかる類の談論をわたくしは語るであろう。』

ここで、少欲論、遠離論、不交際論、精進努力論、戒論、禅定論、智慧論、解脱論、解脱知見論などが覚りの道に役立ちそうなのは何となる分かるであろうが、この中になぜ「知足論」が入っているのであろう。

実は「知足論」こそ覚りの瞬間に起こる心の挙動とその定着の様子をすばり示すものだからである。 知足論をマスターした人はたとえ覚りに至らなくとも人生を全うする。 知足論を追求する人の人生は必ずや空しからざるものとなる。 たとえば、料理人の中で、調理法や材料、調味料、塩加減、デコレーションなどにではなく、出汁の良し悪し・可否・適不適について追求する人が、より美味しい料理を作るようになることと似ている。 何となれば、これこそが実は決定的なことだからである。