【恣意的に切り捨ててはならない】

正しい道を歩もうとする人は、恣意的に何かを切り捨ててはならない。 しかし、かと言って、何かにこだわっているようでは安らぎに至ることは遠いこととなる。

もろもろの如来は、何かを切り捨てることによって覚ることができるとは言わないし、反対に何かにこだわることによって覚ることができるとも言わないからである。

たとえば、心身共に健康な人は、毎日の食事の内容に一々こだわることなく美味しいものを食べるが、自然と栄養のバランスがとれているようなものである。 その一方で、不健康な人は、これは食べてはならないとか、これは必ず摂取しなければならないとか言って食事の内容にこだわるが、その実、栄養のバランスを欠いてしまう。 また、不健全な生活をする者の中には、明らかに偏った食事をする者があり、あるいはサプリメントに過度に頼ったり、あやしげな薬に耽ったりして、心身の健康を根底から損なう者も現れる。

知者は、為すべきことを弁え知って、種々雑多なことをしようとはしない。 それでいて、知者はすみやかに目的を遂げるに至る。 しかし、愚かな者は、種々雑多なことをしては道草を食い、そうしてまるで好むかのように自分から道に迷うのである。

人が、覚りに近づき至ることは最初から最後まで各自のことがらである。 それぞれの人の因縁が、彼自身を発心せしめ、また解脱せしめるのであるからである。 そこには、捨て去るべき何ものも無く、こだわるべき何ものも存在してはいない。 それゆえに、こころある人は、よく気をつけて世を遍歴せよ。