【苦の因とその滅】

苦しみの原因が、苦の因である。 
素因が、苦の因である。
無明が、苦の因である。
潜在的形成力が、苦の因である。
識別作用(識)が、苦の因である。
接触が、苦の因である。
感受が、苦の因である。
妄執(愛執)が、苦の因である。
執著が、苦の因である。
起動が、苦の因である。
食料が、苦の因である。
動揺が、苦の因である。
従属が、苦の因である。

それゆえに、苦しみの原因,素因,無明,潜在的形成力,識別作用(識),接触,感受,妄執(愛執),執著,起動,食料,動揺,従属が無くなった人は苦の因がない。 彼は、苦の因の滅をすでに為し遂げている。

聡明な人は、自ら為す観(=止観)によって苦の因の真相を知る。 そして、ついに苦の因の滅(=智慧)を見い出して一切の苦悩から解脱するのである。

喜びという言葉を知っていても、それだけで喜びを感受するという訳にはいかない。 楽しみという言葉を知っていても、それだけで楽しみを体現すると言う訳にはいかない。

それと同じように、苦の因についてのそれぞれの言葉を知っているだけでは苦の因の滅を為し遂げることはできない。 ただ、心構え正しき人がついに苦の因の滅(=智慧)を見い出してさとり、さとり終わって、この円かなやすらぎ(=ニルヴァーナ)へと到達するのである。