【色即是空・空即是色】

”色即是空”つまり色(=形態(rupa))は空性であるという言明は、誤解を招きやすい表現であるがこれ自体はあながち間違った言い方とまでは言えない。 識別作用と感受作用を滅ぼした覚者にとって、その滅ぼした対象の色(=形態(rupa))はまさしく空性であったと認められるからである。 また、覚り以前においても、ある種の空観によってもたらされる見かけの定(サマディ)においてこの色(=形態(rupa))の滅を疑似体感することができる。

その一方で、”空即是色”という言明は事実に即しておらず間違いである。

ところで、人は”色即是空”ということにまつわって為されるいかなる修学や修行によっても覚りに至ることはできない。 ”空即是色”ということにまつわることがらについてはなおさらできないことである。

真実の真相を知らない人々(衆生)にとって、これらのことはすぐには了知できないことであろうがこれが真相なのである。

それゆえに、聡明な人は”色即是空”や”空即是色”という言葉にまつわって世間に飛び交う種々さまざまな見解から離れるべきである。  それらは、いらぬ争論の種となるだけで役には立たないからである。