【菩薩】

人は、こころからの望むならばついには解脱して覚りの境地に至る。 これは真実である。 そしてただ菩薩だけが仏となる。 それもまた真実である。

菩薩は、日常はともかく、ことに臨んだそのときには一切の思慮・分別を捨て去ってしかしことがらの真実の真相を見極める。 いかなる人々も、いかなる存在も、菩薩のその行為を邪魔することはできない。 誰も菩薩の道の歩みを誤らせることはできない。

では菩薩とは何であるか? この面と向かって発せられた問いには次のように答えなければならない。

 『人をして円かなやすらぎ(=ニルヴァーナ)へと導き至らしめるこの一なる道の存在とその広く堅固な様をこころに知っていて、その歩みの糧を適時に得、塵をまき散らすことなく、憂いを去って、高ぶることなく、徳行に篤く勤しみ、他ならぬ自分自身が仏になれることを信じ、自ら仏になるのだと決心している〈道の人〉。 彼が菩薩である。』