【愚問】
愚問を発しながら、それが愚問であることを知らない者がある。
たとえば、Aというものがあり、ある人がAを説明するために次のように表現したとしよう。
・ Aとはこのような形のものである。
・ Aとはこのような色のものである。
そこへ次のような問いを発する者が現れた。
「形と色、この二つはどのように違うのでしょうか?」
これが愚問の一つの典型である。
この問いを発した者は、Aそのものには何の興味も示しておらず、そもそもAを知ろうとしておらず、説明者がAについて語ることの真意を解していない。 かれは、ただ言語表現された言葉に興味を示し、枝葉にこだわって独り相撲をとり混乱しているのである。
このような者は、ひねくれ者と呼ばれ、また愚か者と呼ばれる
ところで、愚問を発する者が覚りの境地に至ることがあり得るのであろうか? それは恐らく難しい。 愚者は、問い以前の問題を心に抱えているからである。 そして、そのことに気づくことそれ自体が難しいことである。 愚者は、まさしくそのようであるゆえに愚者と呼ばれ、ひねくれ者と呼ばれるのであるからである。