【解脱が起きるその瞬間】

真実を知ろうと熱望する人は、因縁を生じてついに解脱する。 解脱は修行の完成である。 ここに至れば憂えることがない。 それは一切の苦悩の終滅である。

解脱が起きるその瞬間は、わずかに2〜3分間のできごとである。 そして、その具体的なことは次のとおりである。

 『人が観(=止観)を行っているときそのの完成に伴いこの上もなく悲惨な衆生のすがたを見る。 それと同時に、その悲惨さを知らなかった愚鈍なる自分自身のすがた(まるで寝ぼけた心の有り様)が突きつけられる。 そして、その愚鈍なる自分を懺悔したとき、過去に耳にした摩訶不可思議なる智慧(=仏智,=善知識の言葉,=法の句)を思い出してその真実を理解することを得、〈特殊な感動〉とともについに解脱は起きるのである。』


[補足説明]
ここで、この上もなく悲惨な衆生のすがたとは、他ならぬ自分自身をも含めた世の人々の真実のすがたである。 また、ここで智慧の真実を理解するとは、過去に耳にしていて今まさに思い出したそれ(=法の句)がまさしく正法の具現そのものであることを理解することを意味している。