【端正な人】

人が欲にかられ、種々の思惑を生じてあれこれと奔走し、自分ならざる何かに依拠して行なうならば、かれ自身思いもよらない結果を見ることになる。 かれは、自らの行為の行き着くところを見て愕然とするのである。

しかしながら、ここなる人が聡明であって、慳みの心を捨て去り、自他(の優劣)を区別・裁量する不当なる思惟の根本を断じて、悪を離れ、偽りを語らず、両舌をこととせず、言葉と行為と想いとを慎しんでいるのであるならば、かれの風貌とは何ら関係なく、かれは「端正な人」だと知られ称される。 かれは、肉体の重荷を降ろすことにも増して、心の重荷を降ろしているのであり、それゆえに端正であると言われるのである。

こころある人は、何を為そうとも、他の人の一々の目を気にすることなく、ただ自らのこころの目に照らして恥じることのない行為を為す端正な人であれ。 けだし、人は自らの端正さによってこそ、人々の真実のすがたを知り究めるに至ると期待され得るからである。