【師事】

師があろうとも、師がなかろうとも、心構え正しからざる人は空しく老いる。 かれの知識や財産は増えるが、智慧(学識)は増えない。 そうして、かれはまるで好むかのように世間の重荷を背負い続け、最大の重荷(=無明)をついに降ろすことがない。

師があろうとも、師がなかろうとも、心構え正しき人は颯爽と世間を走り去る。 かれは、重荷を背負ってのろのろと歩いている人を追い抜いて行く。 かれは、目指すべき処を自ら知って迷わず、ついに至るべき処に到達してすべての重荷を降ろすに至る。

人の智慧(学識)が増えるのも、人が人生の重荷を降ろすのも、すべてはかれの心構え一つである。 それゆえに、こころある人は、心構え正しく、よく気をつけて世を遍歴せよ。 そのようにするならば、師ある人は師の言葉を体得するに至り、師なき人は善き人々の言葉(=法の句)を我がものとするに至ると期待され得るからである。

しかし、そもそも円かなやすらぎを求める人は、師ということにこだわってはならない。 師にまつわることがらも実は重荷であると考えて、師への想いから生じる固執の偏見を捨て去り、師事することについての根本の執著を超越せよ。