【最上の行ない】

気をつけることは、最上の行ないである。 たとえ、今現在それが不完全なものであるとしても、気をつけることは確かな果報をもたらす。 それは世間の利益(りやく)には必ずしも直結しないが、功徳を積むこととはつねに大いに関係している。

世に多くの愚かな者どもがいるとしても、たった一人の気をつけている人がいるならば、その集いは危険に陥ることがない。 たとえ難所に遭遇しても、すみやかに抜け出すことができるであろう。 そこは、悲しみと恐怖から遠く隔たっており、多くの楽しみを享受することが約束されている。

よく気をつけている人は、自分がよく気をつけていることに気づくことはない。 しかしながら、気をつけることは当人が想像することもできないほどの大いなる果報をもたらし、わずかでさえも損なわれることは無く、何一つ失われることは無い。

こころある人は、ことわりをこころに知って行為の帰趨を見極め、よく気をつけて世を遍歴すべきである。 この最上の行ないを為すならば、かれは人に煩労をもたらすもとのものの正体をついに識り明らめて、悪をとどめ、人の行為の虚実を知り及び、行ないにまつわる迷いと妄執とを断じ尽くして、安らけく境地に至ることは間違いないからである。