【危険がない道】

世間には、種々さまざまな危険が潜んでいる。 しかしながら、ある人は危険に直面し、別のある人は危険そのものを回避する。 危険そのものを回避した人にとっては、世間に危険が存在しないも同然である。 そして、危険そのものを回避した人は、危険を回避した(根底の)理由を知ることはないが、かれはまさしく正しい道を歩んでいるのであると認められる。 なんとなれば、正しい道を歩む人に危険が及ぶことは決してあり得ないことであるからである。

この危険のない道は、予めこれがそれであると言うようには識ることはできないが、どのような場合においても危険のない道として確かに存在していて、聡明で心構え正しき人だけがその道を平らかに歩んで、ついに円かなやすらぎ(=ニルヴァーナ)に至るのである。

こころある人は、この一なる道の存在をこころに知って、人を迷わせる根底の疑惑を離れ、想いを落ちつけ、憂いを去って、心晴れやかに、よく気をつけて世を遍歴せよ。 危険のない道こそが、正しい道に他ならないからである。