【真偽を識り分けて】

たとえ味も良く、香りも良く、いろどりも良く、冷熱の加減も固さ柔らかさもピッタリで、滋養になる食材が多く含まれ、食べやすくしつらえられており、量も丁度良く、まさしく美味なる食事の要素を揃えていても、その中に人を死に至らしめるに充分な毒物が含まれていればその食物は総じて毒なのであると知らねばならない。 その含まれている毒物が無味無臭であり、微量で致死量に達し、解毒する方法が無く、一度口にすればそれを吐き出すことさえ困難なものであればなおさらである。

さて、この世にはまさしく如来が説いた理法の言葉を記した真実の経典もあれば、そうではないものも存在している。 そして、そのような偽経の中には99.9%あるいはそれ以上の理法の言葉を連ねていながら、肝心な点については誤った見解を述べているものも存在している。 このような偽経は、一見して尤もらしい典籍であるゆえに人を惑わしやすく、それに耽溺して抜け出せなくなる者も少なからず現れる。

聡明な人は、明知によってその真偽を識り分けて、知るべきことを知るべきことであると知ってそれを会得し、知るべからざることは知るべからざることであると知ってそれは捨て去り、以て自らの道の歩みを確からしめよ。 この世では、それを為し遂げた人だけがこの円かなやすらぎ(=ニルヴァーナ)へと到達するのであるからである。