【省察】

人は、世間において自ら経験したさまざまなことについて如何なる思惟・分別を行ったとしても、それらによって直接にも、間接にも、超越的にさえも覚りの境地に至ることはあり得ない。 しかしながら、覚りの境地に至ることを目指す(正しい)熱望を起こした人が、他の人の行為はさておき、他ならぬ自らの行為について正しい省察を為すならば、かれは覚りの境地に至る正しい道を確かに歩んでいるのであると認められる。

そして、覚りの境地に至ることに役立つ、正しい省察とは次のものである。

○ こだわりを離れることについての省察
○ 怒らない(怒りに心を鷲掴みにされない)ことについての省察
○ (人を)傷つけないことについての省察

もし人が、これらの省察を為し、為し遂げるならば、かれはついに人と世の真実を自ら識り究め、以て世俗を出離し、離貪して、すみやかに覚りの境地に至ると期待され得る。

この覚りに役立つ正しい省察は、<観>においてこそ為されるべきことであり、こころある人はこのようにして<観>を完成させなければならない。 やすらぎに至る道を求め、歩まんとする人は、決して人を悲しませてはならない。 省察の要諦は、このことに尽きるのであるとこころに領解し、自らの道を浄めかし。