【”少なくとも...”】

実に尊敬さるべき人は、ことに臨んで次のように思う。

”少なくとも...”


かれは、些細なもの、微妙なるものの中にこそ示現するその真実(=真理)を決して軽んじないという稀有なる行為を為し遂げたのであり、同時に大いなる果報の顕れを見、量り知れないほどの功徳を得たのである。 けだし、苦の真実も、苦の原因も、覚りの因縁も、覚りの境地に向かう道の道すがらにおける種々さまざまなことがらも、実は些細なもの、微妙なるものに縁って起こるものであるからである。 それゆえに、些細なものを完全に(つまり絶対量の大小・多寡では無く、100%という意味で)理解したならば、この世のすべてを理解することになる。

人が、それをまさしくそのように為し遂げた瞬間に、かれ(彼女)のあらゆる苦悩は終滅する。 この厳然たる事実が、微妙なる法(ダルマ)の実在とその威力を示す証左に他ならない。


[補足説明]
人が、ある一つのことを完全に(つまり絶対量の大小・多寡では無く、100%という意味で)理解したとき、実際にはそれだけでなく、それにまつわる無限のことを完全に理解することになる。 それは、例えば、無数にある赤色のどれでもよい、唯一つの赤色を完全に(つまり絶対量の大小・多寡では無く、100%という意味で)理解した人は、この世に存する無限の赤色を残らずそれがそうだと理解することを得るのと同様である。