【心構えの違い】

たとえばここに二人の人があって、あることがらを同じように志し、同じように励んだとしても、月日が経つうちには次のようなことが起こり得るであろう。

■ 一方の人はその道の達人となり、もう一方の人はただ悪い癖がつくだけで上達しない。

■ 一方の人はそれを確かに修得するけれども、もう一方の人はそれがさっぱり身につかない。

■ 一方の人は有意義な時間を過ごすけれども、もう一方の人はただ時間がむなしく過ぎるだけである。

■ 一方の人はやるほどに迷いが無くなり、技は洗練され、心は安寧に帰して行くけれども、もう一方の人はやるほどに迷いが深まり、手際はぎこちなく、混乱して、心は動揺するだけである。

二人の人が、そのことがらを同じように志し、同じように励んだにもかかわらず、結果としてこのような違いを生じたとき、第三者がこの二人の違いを生じた理由を敢えて言葉にするならば、それは「心構えの違いによる」と言わざるを得ないであろう。 それぞれの違いを生じた原因を、たとえば努力の多寡、才能の有無、環境要因の優劣、費やした時間の長短などに求めることはとても出来ないからである。 実に、心構えとはそういうことであるのだと知らねばならない。

そして、覚りの境地に至ることを目指す人は、何よりも先ずその心構えが正しくなければならないのである。