【買い時】

例えば、娯楽用の家電製品や趣味のオーディオ製品、デジタルカメラやビデオカメラなどの行楽向け商品などを新規に買ったり、あるいは買い替えたりしようと思うとき、いつが買い時であるかについて身近かな人と議論することがあるでしょう。 しかしながら、これらの商品は、次々と新しい機能が盛り込まれたり、新しい方式やメディアが採用されたり、機能や方式が進化したり、値段が大きく変化したりするため、いつ,どの商品を買えば良いのか分からなくなってしまうことがあると思います。 そのようなとき、迷いを払拭するために一般的によく言われ、しかも多くの人が納得する一言があります。 それは、

 「欲しいときが買い時!」

というキャッチコピーです。

もし、対象商品の細かい機能の違いやわずかばかりの性能の優劣にこだわったり、少しのお金をケチって底値になるのを指をくわえて待っていたり、その商品がスタンダードであるのかマニアックなものであるのかなどという商品そのものとは無関係のことを気にしたりするならば、散々迷ったあげく時間だけが過ぎていくに違いありません。 そしてその結果、対象商品を買おうと思った動機の理由自体が喪失してしまうことにもなりかねません。 例えば、子供の運動会の様子を映像に残そうとビデオカメラを買うかデジタルカメラを買うか迷っている間に、運動会自体が終わってしまったような場合です。 つまり、”そのうちに....”と思っている間は、何一つ進展することは無いと知るべきです。 しかしながら、だからと言って考え無しに適当に商品を買ってしまうのは、勿論後悔することうけあいの愚かな行為であると言えるでしょう。 このような事情から、人があれこれと迷うのは無理からぬことだと思います。

ところで、物を買うことにおいて大事なこととは、詰まるところ後々悔いを残さない買い物をすべきだということに尽きるでしょう。 そこで、上のキャッチコピーの出番となります。 さて、このキャッチコピーは、購入に際してそれが何であるかという分析的なことよりも、それを欲しいと思ったという感性の方が重要であるということを主張していますが、なぜそのようにすることに意義があるのでしょうか。 それは、そのようにして物を買うことが結局は後悔しない買い物をする有効な方法であることを、実際に多くの人が経験しているという事実にもとづいているからです。 つまり、このキャッチコピーは、その根拠を合理的に説明することはできないけれども、経験的に大いにうなづけるものを持っていると考えられるのです。

[出家も]
物を買うことと、出家することを同列に扱うのはどうかとも思いますが、その決心の様子は実際のところよく似ています。 なぜなら、覚りの境地に至ることを目指して行う出家も、最も大事なことはどこにどのように出家するかということでは無く、いつ出家すべきかという時期の方であるからです。 上のキャッチコピーに倣って出家のキャッチコピーをつくるとするならば、例えば次のようになるでしょう。

 「発心を見たときこそ出家すべきそのとき」